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[hiroic's various Review & Daily Memo] Hiroicによる映画・ドラマ・本・芝居・四方山などに関するれびゅー
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作/長野まゆみ
出版社/河出書房新社

ReviewWriteDate:2000/10/1
LastUpdate:2000/10/1

Note:
長野流、銀河鉄道の夜。

Story:
賢治はいつの間にか列車に乗っている。どこから来て、どこへ行くのかもわからない。
そんな賢治の元に、ふたりの少年──カムパネッラとジョヴァンナ──が現れる。


ヒトコトReview:

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せつないまでの夜の闇──じっくり味わいたい銀河鉄道の夜
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■賢治先生

賢治先生というのはもちろん宮沢賢治を暗に模している。
このお話自体がもうひとつの銀河鉄道の夜。
長野まゆみが宮沢賢治好きなのはファンの間では有名なところ。
そう言われて見ればもつ雰囲気も似た部分がある。

この賢治先生は何故か列車に乗っている。
その列車は浅草についたりもするしもっと南をめざしもする。


■カムパネッラとジョヴァンナ

そんな彼のもとにふいに現れる少年たち。
いかに美しい少年かというのは丹念に描写されているのだけれども、
正直わたしはそういう美醜云々を描写されるのがどうも気恥ずかしい性質。
(多くの長野ファンはこういう部分が好きなんですがね)
長野作品は大体2通りあって、宮沢賢治ばりの童話といいますかそういったものをモチーフとした旧かなづかい満載のもの(『野ばら』など)と、文章は限りなく平易で淡々としてもの(『白昼堂々』シリーズなど)があって、わたしは後者で長野作品にはまったクチ。
さては、これは超ロマンチックな美麗な文句でちりばめられたタイプの本かな──?
そう思いながら読み進む。

カムパネッラはもちろんもう1人のカムパネラ。
みな『カムパネッラ』とは発音できず『カムパネルラ』と発音してしまう。
彼は言う。


「ぼくの名前は正確に願います。どうぞ遠慮なく、こいつはなんて厄介で世話のやける子供だらう、まったく癪にさわるって思ひながら、舌打ちをなさってみてください。さうすれば、自然とカムパネッラになるんですから」


舌打ちしながら呼んで初めて正しい発音。
どうでもいい描写かもしれないですが、わたしはこれがどうもせつない。
子供の台詞ではないというか、それでも実は子供というものはそういう世界の掟のようなものをもうちゃんと知っているのだ──というか。
賢治も怒りにまかせてカムパネッラと発音できたりもします。
ただそれは、なんとも悲しい響きなわけで、なのにそれを自分の名前として主張するカムパネッラの存在と、自分だけはちゃんと発音できるというのを自負している、もしくは支えとしているジョヴァンナ。

ジョヴァンナは少年にも関わらず女言葉を話す。
ただひたすら少年を描く長野作品にしては異質の存在。
女の子を描く時の長野まゆみの視点はどんな年齢の女の子であっても『女』として描くので。
そのジョヴァンナはカムパネッラにとって自分が一番でないことを病んでいる。
だからこそ強行なまでに自分の存在をアピールする。
その強さはとたん崩れる脆さでもある。
ふたりの少年のやりとりはそんな危うさとともに進んで行く。

ジョヴァンナはカムパネッラの友情をただひたすらに求めている。
自分が一番でないことを知りながら。
そんなことはない、というカムパネッラは悲壮感がない。
本質的にジョヴァンナの不安を理解していないからだ。
ふたりのやり取りは少年同士の友情でありながらまるで恋のさやあてのようにくりひろげられる。
そしてジョヴァンナが少年でありながら少女でもあるような微妙さ。
小学校時代の友達の存在というのは、もしかしたらそういうものだったかも知れない。


■銀河鉄道の夜との融合

第四章になってふいに鉄道に乗る前に話がもどる。
そう、銀河鉄道の夜のはじまり──。
かつて読んだ銀河鉄道の夜の話がすーっと思い出されてくる。
名前は違えど、そこで繰り広げられるのはまったくの銀河鉄道の夜の序章。
虫眼鏡で活字をさがすアルバイトをしてお金をかせぐジョヴァンナ(ジョヴァンニ)と彼のあこがれの友人カムパネッラ(カムパネルラ)。
そのせつない導入部からふいに鉄道内へと話が戻る。
そしてカムパネッラはジョヴァンナを置いて行ってしまうのだ。
これが本当の銀河鉄道の夜の通りに進むのならば、カムパネッラは死んでしまったのだ。

この第四章、実はこの部分が先出しで『文藝』の宮沢賢治特集に掲載されたもの。
その後第一章~三章が書き下ろされてこの本になったらしい。
長野まゆみの中ではすでに全体はできあがっていたのかもしれないが、なんとも驚異的なこと。
この物語は一章から三章までのやりとりがあってはじめて第四章の銀河鉄道の夜をより長野まゆみのものとしているのだから。


■文章の中に落ちている言葉ひろい

先にも書いたように、実はもともといわゆる美文が苦手である。
こまやかな描写を愉しむタイプではないのだ。
にもかかわらず、最近は長野まゆみのそういう部分が好きになってきた。

多くのファンはきっと次々現れる夢のような世界、少年たち、星、食べ物、そういった長野世界をつくりあげている要素自体も大好きなのだろう。
わたしはどちらかというと、そういう『普通でない世界観』の中に垣間見られる『ごく普通の感情』表現をみつけるために読んでいるような感じだ。
特にこの本は、ちょっとでも気を抜くと気づかずに過ぎてしまいそうなそういった『感情』がはしばしにうめつくされている、そういう本だった。
何度でも読み返したくなる、そういうモノがあったのはなんともうれしい限りだ。

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