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[hiroic's various Review & Daily Memo] Hiroicによる映画・ドラマ・本・芝居・四方山などに関するれびゅー
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作/長野まゆみ
画/鳩山郁子
出版社/作品社

ReviewWriteDate:2000/7/20
LastUpdate:2000/7/20

Notes:
天球儀文庫・アビと宵里のストーリー4編。
変わった小B6判ハードカバー。




この天球儀文庫はサイズも変わっている上に中の挿画も印象的。
必ず文中の語が英語やフランス語等で詩的にささやかれている。
つい日本語訳してしまう小市民なわたし──。

ヒトコトReview:

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アビと宵里、ふたりの一瞬の世界がせつない
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vol.1 月の輪船 A SICKLE BOAT
Story:
「この音が何に似ているのか、夏の間、ずっと考えていたんだ。ソォダ水はいつも飲んでいるのに、なんだか突然気にかかってサ。」──新学期、古代天球儀のある屋上で宵里がアビにこう云った。今夜は今年最後の野外映会。生徒たちのざわめきのなか、アビと宵里はソォダ水の記憶を確かめようと映写機のおいてある音楽室へと向かった──。
(口絵より)

■鳩のようにとべたなら

文中に出てくる「歌」です。
このシリーズはよく歌が出てきて詩で語るわけですが
この鳩のようにとべたならは逸品です。
なぜ──鳩なのだろう?
鳥は長野作品に多く出るモチーフのひとつです。


vol.2 夜のプロキシオン A PROCYON NIGHT

Story:
クリスマス休暇でにぎあう中央駅で、アビと宵里はとんでもないチビを拾ってしまった。チビにふりまわされる二人の上に、今年はじめての雪が舞い降りる……。
(口絵より)

■アビと宵里、日常。

クリスマスストーリーです。
アビが「ひっかけた」チビのせいで休暇先にいけなくなった二人、アビと宵里。
いつだって豪胆な少年にはなりきれないアビ。
ぐちぐち言いながらもやさしい宵里。
ふたりの関係がここちよい。
シリーズものとも知らず③銀星ロケットから読んでしまったわたしですが
銀星ロケットでもここちよい二人。

長野作品によくある
「ちょっと(表面的には)気の弱いでも芯のある少年」と
「一見豪胆で太陽の下で自分のためだけに生きているけれども、繊細な少年」
の組み合わせ。
実はわたしは全長野作品の中でこのアビと宵里ペアが一番好きです。

かれら二人の間には友愛以上の微妙な占有欲と
少年らしいほがらかさが同居していて
読者をどきりとさせるのです。
『新世界』なんかだとわかりやすすぎてつまらないんですね、わたしは。


■雪のピアノ

夜のプロキシオン、最大のオススメはやはり「チビ」天使のピアノ。
アビと宵里、そしてチビでのノエルの夜の時計塔でのシーン。


「ねえ、ピアノを弾いて、」から始まるシーン。
あああ、読んでよかった。でした、ほんとに。
よくあります、この1シーン、この1フレーズに出会えたからもうすべてOKになるような本。
もちろんこの夜のプロキシオンは「それだけじゃない」本ですが、何と言ってもこのシーンが一番でした。

見えない鍵盤、聞こえる音、でも聞こえない音。
ノエル。雪。ひく指はきっと冷たくなんかない──。

そして「チビ」が消え去ったあと、このピアノだけが残る。
その挿絵がなんとも言えない余韻を届けてくれます。


vol.3 銀星ロケット A LUNATIC ROCKET

Story:
街が花々で飾られ、楽しい計画がいっぱいのはずの復活祭。しかしそれは思わぬいざこざが起きかねない「気狂いじみた春」のおとずれでもあった……。
(口絵より)


■アビと宵里、相手と自分。

そんなわけで初めて読んだアビと宵里ストーリです。
実はシリーズのド真中から読み始めてしまったと知って得心してしまった
ふたりの関係でした。
いきなりこれじゃ、びっくりするわ。

このお話のメインはアビと宵里の喧嘩?(というか一方的にアビが宵里に対する占有欲に苦しむ)なのですが
それが復活祭、宵里の叔父、アビと宵里の兄たちを通じて語られて行くうちに
自分の中に有る同じような感情とはまってゆき、
すっかり世界にとりこまれてしまいました。
先の項にも書いたように、この二人、なんともいえずいい関係です。

アビは宵里が自分より宵里の叔父を優先させることで思い悩む。
宵里はそんなアビの気持ちを知っている。
だからこそ「どうしてそんなことを悩むんだよ」ぐらいの思いやりとも意地悪ともつかない態度をとる。
お互いにわかっていてでも微妙で。
喧嘩? ──喧嘩じゃないよね、これは。
お互いにちゃんと「知っている」のだから。

そういえば小学生の頃なんかは、友達が学校生活のすべてで喧嘩なんてしたら世界全滅状態だったなあ。
あの頃を思い出しました。
(今やそんなかわいい行動とりゃしない。世界から相手をぶったぎっちゃいますしねえ)


vol.4 ドロップ水塔 A BEACH TOWER WITH DROP

Story:
夏季休暇の一日目、あきらかに今日から天の色が違う。いつもと違う夏の終わりを予感しながら、二人はそれぞれの季節を歩きはじめた。──好評連作完結編。
(口絵より)


■アビと宵里、別れ。

わたしの大好きな、アビ&宵里がついにこのお話ではなればなれになります。
いつも通りの日々。空。空気。なのに変えてしまうのは不在の予感。
宵里自身がその実、恐れ不安にさいなまれている──そして、アビが力強い。

「まさか、ぼくが迷わないで決めたなんて思っていないだろう。」
アビは返事をしなかった。
(中略)
「……ほんとうは、さっきまで迷っていたんだ。アビに反対されたら、やめていたかもしれない。」
「……宵里は行くサ。ぼくが何と云っても。」
宵里はほんとうにアビが止めたら、一瞬は言葉につまってもそれを気づかせないぐらい自然に「それでもぼくは行くよ」と言っていたと思う。
アビが止めないからこそ出る、誘惑。
ここでひきとめたりしないアビが、素敵だ。
少女じゃない少年。だから長野世界だ。

アビと宵里はきっともう二度と逢わないんでしょう。
少なくとも今のまま、逢うことはない。
また他人から始めて、それでもお互いに「近づきたい」という感情がおこったならばそこで初めて出逢う。
そう、きっと物理的に再会したとしてもその時のそれぞれにとってお互いが必要じゃなければ、出逢いにはならない。どんなにかつて親しくても、その時の自分の生きかた、立場、想い、タイミングが合ってふたたび親しくなることなんてほんの奇跡。
でも、このふたりならそんな奇跡もみせてくれるはず──。

ぐじぐじ、読みてであるわたしのこころを痛ませる。
ぜひ、一読してほしいストーリーです。

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