忍者ブログ
[hiroic's various Review & Daily Memo] Hiroicによる映画・ドラマ・本・芝居・四方山などに関するれびゅー
80 80 80 80
80 80 80 80
[47]  [48]  [49]  [50]  [51]  [52]  [53]  [54
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

作/長野まゆみ
出版社/大和書房

ReviewWriteDate:2000/12/23
LastUpdate:2000/12/23

Story:
ぼくは生意気でユウウツな中学三年生だ。
この夏、十五歳になる──。
繊細にして傲慢、冷静にして感情的な少年たちの輝かしい季節を描く、とっておきの成長物語。
(帯より)




ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
長野的、少年の動向変化?
--------------------------------------------------------------------------------

■長野まゆみと少年

本の雰囲気は、系統として『白昼堂々』シリーズタイプ。
文も平易で装飾過多ではない、ストレートなもの。
けれど扱う内容はもしかしたら長野まゆみ的深みなのかしら──。

主人公の『ぼく』は小さい頃まで自分を女だと思って育ってきた。
だから未だに自分はそれを混同してしまう。
『ぼく』をこうしてしまった双子の兄姉に反発しながらも自分をひたかくしにして優等生を演じている。
そこに都会から転校生がやってきた──。
と、長野まゆみによくあるパターン。
けれど今回決定的に違うなと思ったのが主人公の意識ではないか? ──読後の印象はそれにつきる。

『白昼堂々』の主人公といっそ同じ性嗜好(男しかダメ)なんだけれど、『ぼく』はそれを隠すべきものとして『自覚』して暮らしている。
それは開き直りではなく、確かに後ろめたさを抱えながら生きているのだ。
『白昼堂々』がそうでないというわけではないが、作者自身がそれを正面きって『うしろめたく』描いているというのが、変化だな──と思ったのだ。

長野まゆみが本質的な意味で少女も女も描かない理由は深いのだろうけれど、それをひとごとのように描いてしまっている『新世界』などとは、趣を異とする。
別段他作品と際立って面白いというわけではないけれど、その点だけ、正直意外に思えたのでした。


■やはりおいしい、兄の存在

今回、やっぱりおいしかったのが兄・十(みつる)の存在。
どうしてこうも兄というのは大きく優しいのでしょう?
姉・百(もも)は太刀打ちできないわ。
カッコよすぎます。
転校生・七月(なつき)との恋愛感情ともつかない思いよりも、兄の存在が勝ってるよね、絶対。

それにしても、幼い頃に見知らぬオジサンに──というオチは、パターンすぎて悲しいわ。
そういう犯罪が多くなっている昨今だからよけいに。
それだけに理由をもたせてお話が解決されちゃうのが、どうも物足りなかったといいますか。
違和感が残ったのは確かです。

拍手

PR
作/長野まゆみ
出版社/河出文庫

ReviewWriteDate:2000/12/23
LastUpdate:2000/12/23

Note:
短編集。『星降る夜のクリスマス』『仔犬の気持ち』『少年アリス 三月うさぎのお茶会へ行く』『クリスマスの朝に』

Story:
「ほら、天使が降りてくる。」──フラノがつぶやくと、ミランには何も見えなかったけれど、仔犬のタッシュが吠えたて、天使が羽根を震わせたように雪が降り始めた。降誕祭の夜空に紡がれる、素敵な物語を集めた夢のお話集。
(背表紙より)




ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
子供時代を思い出すあったかなクリスマス本
--------------------------------------------------------------------------------

■仔犬タッシュ

クリスマス関係の内容が多い中、実は一番好みだったのが『仔犬の気持ち』。
パパがもらってきてくれた仔犬、タッシュ。
そして『ぼく』と『兄』。
両親というあたたかいものと、兄と自分、そして新しい家族となるタッシュ。
その様子が『ぼく』の視点で描かれていて
「くーーー、かわいい」
て感じでした。
かわいい、のは子供でも犬でもなくて──その空気。
誰もがやさしくて少し意地っ張りで、こういう空気を自分もかいでいたことがあったはず──という懐かしさのようなもの。
パパのマフラーの逸話がなんとも好きです。

結局ラストでタッシュは元の家に自力で帰ってしまうんですが。。。
で、そのタッシュ、よく見るとその前の短編、『星降る夜のクリスマス』でミランがつれている犬。
はたしてミランが『ぼく』なのか?
それともタッシュが戻った家の子供がミランなのか?
そういうことまで楽しい想像がふくらみます。


■特別な一日

長野作品の中でクリスマスはかなり頻出度が高いイベント。
雪。教会。鐘。子供たち。大人。そして天使。
『夜のプロキシオン』もとにかく大好きなのですが『星降る夜のクリスマス』も同じ空気をまとっています。
フラノは天使なのかな? ──と思わせる。
『クリスマスの朝に』はめずらしく少女が主役。

そういえば、クリスマスって本当に楽しみなイベントだったなあ。
幼稚園がキリスト教で、クリスマス会のイベントはイエス生誕の劇でした。
宿屋がやりたかったのに天子役。(宿屋も天使も所詮、群衆)
子供心にとても神聖な日でした。。。

拍手

作/アラン・ブーブリル クロード=ミッシェル・シェーンベルク
原作/ヴィクトル・ユーゴー
ReviewWriteDate:2000/12/19
LastUpdate:2000/12/19

2000/12/10 17:00 Cast:
山口祐一郎(ジャン・バルジャン)
村井国夫(ジャベール)/島田歌穂(エポニーヌ)/鈴木ほのか(ファンテーヌ)/tohko(コゼット)/戸井勝海(マリウス)/斎藤晴彦(テナルディエ)/大浦みずき(テナルディエの妻)/岡幸二郎(アンジョルラス)
稲垣謙介(ガブローシュ)/石川楓(リトル・コゼット)/利根川鈴華(リトル・エポニーヌ)/大谷美智浩(グランテール)/高野絹也(クールフェラック)/齋藤桐人(ジョリ)/石山毅(コンブフェール)/広田勇司(フイイ)/林アキラ(レーグル)/乾 あきお(バベ)/祐木鎧(ブリュジョン)/中山 昇(プルベール)/大須賀ひでき(モンパルナス)/井上一馬(クラクスー)/松岡美希(クローン・1)/児玉奈々子(マテロット)/坂口阿紀(ファクトリーガール)/井上めぐみ(ジベロット)/国分美和(マダム)/岩本あゆみ(ガミネット1)/鈴木輝美(ガミネット2)/大川美佳(クローン・2)

2000/12/3~2001/2/21 @帝国劇場

Date:
2000/12/10 S席 2FC列56番13:00

Note:
1987年より断続的に上演されつづけているミュージカル。
Story:
1切のパンを盗んだことで19年の牢獄生活を送ることとなったジャン・バルジャンは仮保釈の身のまま逃亡する。その後名前を変え工場主、市長としての地位を得るが、ジャベール警部がジャン・バルジャンを執拗に追いかけ始める・・・



※次のレビューはこちら→レ・ミゼラブル2001/1/13

ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
ごく単純に、涙・涙の感動作
--------------------------------------------------------------------------------


わたしが『レ・ミゼラブル』を観に行こうとは何たる因果なのでしょう?
それもこれも山口祐一郎、あんたのせいだっ! ばかりに意気込んで参りました、オヒサの帝劇。
今回は2階のS席、はしっこの方。やっぱりA席よりは近くて観やすい。
オペラグラスは持ってきましたが、結局使わなかったです。
やはり表情までは見えないんだけど、
なにせ一回目、ストーリーすら知らないので全体を追うことに終始しました。


■山口バルジャンVS村井ジャベール

とりあえず、第一シーンの牢獄シーンから、顔では判断つかなかったですが、声でわかりました山口ジャン・バルジャン。
伸びやかなお声。さすがです。
いいんです、ヒゲ面だろうと、ボロ着てようと!

同時に村井ジャベールも登場。メインキャストがそろいました。
が、初めてなので?山口バルジャンと村井ジャベールの掛合いの部分が聞き取れない~。
いわしさんに事前に聞いていたジャベールの身の上話が聞こえた気がする。
ああ、一回じゃわかんないよう。
全編歌でつづられる為、気を抜くとたまーに内容が聞き取れない。
更正を決意したバルジャンが市長になったのはわかったけれど、市長が工場オーナーという発想がなかったから、あの工場とは関係ないかと思っていた。
あげく名前偽ってたのね。
わかんなかったよ。(涙)

単純なわたしはジャベールがバルジャンを追い詰めるたびに
「いいじゃん、頑張って生きてるんだから見逃してくれよ~」と歯軋りしながら見ていました。
ファンテーヌも虐めるな~とか。(笑)
でも結局ジャベールがどうしてこうまでバルジャン一人に固執するかがわからぬままでした。
お前さん、他に仕事はないのかい?
人生かけて追っかけるってまるで恋愛のようね。(笑)

ラストは素直に涙、涙。
死なないと安らかになれないのかしら?
生きながらバルジャンは幸せじゃなかったのかなあ、なんて考えながら。
勝手にその死の場面にまでジャベールが追いかけてくるかと思ったらさすがにそれはなかったわね。。。


■あっという間に死にゆく人々

事前にストーリーを知らないわたし、
いきなりファンティーヌが死んじゃってびっくり。
おう、メインキャストがこんなに早く死んでしまったわ。
なるほど・・・でコゼットの話で展開するのね。。。と見ていたら
アンジョルラス・・・もわりとあっさり死ぬ。
エポニーヌもあっさり死ぬ。
あっさり・・・といいますか、メインキャストならもう少し「実は生き延びている」パターンじゃないかと勝手に期待していたので意外でした。
恐らく原作は長編だから、色々それまでに生きている姿も出てくるのかもしれないけど。


■島田エポニーヌ

個人的にやっぱりエポニーヌに感情移入してしまいます。
いるんだよねえ、コゼットみたいに何にもしなくても愛されて幸せになるタイプ。
そしてエポニーヌみたいに頑張ってもうまく行かないタイプ。
何となく『桜の園』の曽世ワーリャ思い出しましたわ。涙。
tohkoは高音部が一部聞き取りにくいなあって感じですが、今後なれてゆくんじゃないかな、て感じでした。

島田歌穂、生は初めてでした。
わたしは彼女の声がすごく好きで、どうしてもエポニーヌの島田歌穂を見たかったんです。
『On My Own』はさすが圧巻。
ああ来てよかったわ。
でもちょっとお馬鹿なわたしは何でエポニーヌが血だらけなのかしばしわからなかたのでした。。。

島田さんは初演からずっとエポニーヌなんですね。
さすがに長い。
そういえばわたし、ロンドンのエポニーヌ役だったフランシス・ラッフェルのCDを持っているんですが
「なんかセカンドとか出ないまま消えたわね・・・」
て思っていたらレプリーク曰く、ショウ・ビジネス界から消えていたのね・・・。


■喝采の理由


ミュージカルの拍手。
初めてまともにミュージカルを観た『エリザベート』ではお作法がわからずどぎまぎしたのですが
素晴らしい歌の後は拍手喝采。
こちらも大変わかりやすくて面白い。
たとえば山口さんなんかの後だと大抵わあっと会場から拍手が起こるし、
島田エポニーヌの『On My Own』はまさに割れんばかり、ショー・ストップに近いほどの喝采。
かと思えば斎藤テナルディエのソロの後はお情けのパラパラ拍手。(そんなんだったら拍手ないほうがよっぽど恥ずかしくないってほどの)
いまいち謎だったのが岡アンジョルラスの死体への拍手・・・
そりゃ確かにすごい体勢で、初めてみたわたしはびっくりしましたが
拍手が起こったことにさらにびっくりしました。
うーむ、いったい何に対する拍手なんでしょう? ファンはアクロバットだけでも満足ってこと?

拍手

作/森茉莉
出版社/講談社文芸文庫

ReviewWriteDate:2000/12/3
LastUpdate:2000/12/3

Note:
明治の文豪、森鴎外の長女、小説家・森茉莉のエッセイ。
主に鴎外に関する思い出(結婚前の思い出)。

Story:
東京・駒込千駄木観潮楼。
森鴎外の長女として生まれた著者は、父追う街の愛を一身に受けて成長する。日常の中の小さな出来事を題材にして鴎外に携わる様々なこと、母のことなどを、半生の思い出を繊細鋭利な筆致で見事に記す回想記。「父の帽子」「『半日』」「明舟町の家」「父と私」「晩年の母」「夢」ほか十六篇収録。日本エッセイストクラブ賞受賞。
(カバー背表紙より)



ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
パッパ森鴎外の存在に満ちた人生
--------------------------------------------------------------------------------


■森鴎外と子供たち

実は、森茉莉の小説は読んだことがない。
名前は昔から知っているものの、耽美で流麗な小説世界は恐らくわたしには合わないだろうと思ってきたので。
(長野まゆみが好きといいつつ、実は装飾過多な文章が苦手なのだ)
今回森茉莉の、それもエッセイを読もうと思ったのは夏に行った津和野への旅でのこと。
ガラガラの森鴎外記念館にてじっくり見せてもらた森鴎外の生涯と
彼の送った子供たちへの手紙の展示に興味を持った。
自らを『パッパ』と名乗る明治の父。
全文カタカナで記されたその手紙は子供への愛情に満ちあふれていた。
子供が読むことを前提に書かれた大きな墨の文字、ユーモア溢れた文章。
前妻の産んだ兄・於菟(おと)は別としても、茉莉(まり)、弟・不律(ふりつ/フリッツ)、妹・杏奴(あんぬ)、弟・類(るい)、茉莉の息子・爵(ジャック)と鴎外の名づけた子供、孫の名前はいずれもドイツ名でもある。
ドイツかぶれした近代的な父、森鴎外の姿を垣間見たい。
そういう森茉莉ファンには申し訳ない理由での森茉莉初挑戦だったわけです。


■幼少期の世界

森茉莉の中で、幼少期の百日咳の思い出はその後の彼女に確実になんらかの意味をもたらしている。
五歳の折かかった百日咳は弟不律の幼い命を奪い、茉莉の命を奪おうとした。
これ以上子供を苦しめたくない、もう望みがないのならいっそ──という注射による安楽死の瀬戸際に(『注射』)、母方の祖父によって劇的に救われ、また奇跡的に病気から回復した逸話。
果たして当時こういった安楽死がポピュラーであったのかはわからないが、弟類は死に茉莉は助かったというその攻防(類は安楽死ではなく自然死だが)は幼い子供に深い何かを残したはずで、森茉莉の幼少期を考えるときに忘れられない一節になっている。

森茉莉の幼少期の思い出は『パッパ』森鴎外からの溺愛と悪妻と噂された母、自分を取り囲む大人たち、自然、料理、生と死。
それらが今ここで映像を見ているようにリアルに描かれる。
どうしてそんな幼い頃のことを鮮明に覚えていられるのだろう?
幼少の頃の食卓の描写は見事。
自ら「食いしん坊」であることを自負しているとはいえ、すごい記憶力である。
仮に残っているのが記憶ではなく『イメージ』だけだとしても、それをここまで具現化できてしまうのが森茉莉の文章のすごさだと思う。
記憶があるかないかではなく。


■詩のある父、詩を持たない夫

茉莉と父鴎外との関係は時として恋人のような精神関係である。
鴎外によって「おまりは上等」といって育てられた茉莉は


私は結婚をして幾らか経った時、夫に、言った。
《あたしはパッパとの想い出を綺麗な筐に入れて、鍵をかけて持っているわ》と。
と記している。(『刺』)
彼女は無意識のうちに、結婚し婚家に移ることがなにか不安に満ちた、今までの居場所ではないと感じている。父は詩を持っていた。だが夫にはそれがない。茉莉は夫に期待していない。茉莉にとっての恋人はこの時点では揺るぎ無く、父・鴎外なのである。
少し気になるのがもう一人の娘、杏奴の視点。
茉莉は決して大袈裟ではなくその愛を一身に受けて育ったという。
この親子とも恋人ともつかない関係がどう存在しえたのかを読んでみたいですね。
(杏奴氏も随筆家)
なにはともあれ、この『刺』はかなり痛い。
女性特有の痛さかもしれませんが、必読だと思います。


■耽美的文章世界?

恐れていた美文の嵐(笑)──は基本的にはありませんでした。
ただし漢字の使い方、その読み方等は大変凝っていて、長野まゆみチック。
そういう文章が好きな人にはたまらない媚薬のはず。
ただし『明舟町の家』で多用される『森茉莉的末尾表現』には少々辟易してしまいましたが。昔のわたしが好んで表現していそうな文末で。(笑)
『夢』は、思索の森に突入しすぎていて、小説として受け取ることができなかった。
モチーフは興味深いが、あの文章は──わたしには読めません。(ギブアップ宣言)
もっと短編に詰めてほしかった・・・。

拍手

作/テネシー・ウィリアムズ
翻訳/鳴海四郎
演出/栗山民也

ReviewWriteDate:2000/11/5
LastUpdate:2000/11/7

Cast:
樋口可南子(ブランチ・デュボア)/内野聖陽(スタンレー・コワルスキ)
七瀬なつみ(ステラ・コワルスキ)/永島敏行(ハロルド・ミッチェル)
梅沢昌代(ユニス・ハベル)/中嶋しゅう(スチーブ・ハベル)/金沢映子(メキシコ女)/金子由之(パブロ・ゴンザレス)/シャンディ・圭(黒人女)/篠原正志(集金人の青年)/黒木里美(看護婦)/可知靖之(医師)

2000/10/20~11/11 @新国立劇場中劇場

Date:
2000/11/2 19:00 1F20列33番

Note:
テネシー・ウィリアムズの名作の舞台化。ほぼ同時期に栗原小巻がライフワークであるブランチを演じている。樋口可南子は初ブランチ。

Story:
ニューオリンズのフレンチ・クォーター、貧しいが、生命力に満ちた魅力のある一角。「欲望」という電車に乗り「墓場」という電車に乗り換え、「極楽」で降りて、ブランチ・デュボアは、妹のステラ・コワルスキの家にたどり着いた。2人は、南部の大農園、美しき夢と呼ばれるベルリーブで育った、古き良き時代の上流階級の出である。
ブランチは、妹の貧しく猥雑な生活に驚くが、ステラの夫でポーランド系のスタンレー・コワルスキにとってもブランチの上品さは目障りでたまらない。2人は出会った瞬間から反発しあい、緊張は高まっていく。スタンレーの友人のハロルド・ミッチェルの愛に、過去から逃れてきたブランチは最後の望みをかけるのだった。が、その願いは叶わず、決定的な破局が訪れる。
(パンフレットより)



ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
ブランチの孤独にどこまでついてゆけるか? がポイント
--------------------------------------------------------------------------------

『エリザベート』の内野聖陽は元々ストレートプレイの御方。
てなわけで是非、黄泉の帝王以外の内野閣下を拝見・・・。


■新国立劇場とその周辺

お初の新国立劇場。
京王新線の初台駅から直結していて便利。
地図でみたところ初台って都庁の裏? あたりなんですね。
学生時代、クラスメートが一人暮しで初台住んでいると聞いて「金持ちやなあ」と思っていたんですが
そりゃ半端じゃなく金持ちだわ。(笑)

新国立劇場自体もかなり新しい建物。
クロークとかあってなんともゴージャス。でも床の模様が妙。ていうか上りはいいんだけど下りの時階段と区別がつかなくってわたしかなり危なかった。(笑)

客層はいつもわたしが訪れる劇場からぐんと年齢層が上。
自分の親世代が多いし、おじさまが多い。
樋口可南子ファン?
それとも『欲望という名の電車』マニア? ひょっとして杉村春子とかも観てる?(笑)
内野ファンでいっぱいかと思ったらそうでもなかったって感じ。
隣の席の女性二人は勝手に内野ファンだとふんでいたら「内野さんってNHK出身の人でしょ?」という会話。
(NHK出身て何? 民放出身って言わんよなあ)
なのにオペラグラス持ってチェックに入っていたところを見ると誰のファンなんでしょう。

さて中ホール。
今回10列目まではセットになるのでわたしは実質10列目ぐらいだったんですが1Fの最後列でした。
前列との段差が大きくて見やすい反面、舞台との上下の距離感が大きくてどうも遠い感じ。
かなり危ぶんでいたんですが、目の前の席は巨漢のおっさん。
み、みにくい・・・。

セットは個人的にかなり好きな感じ。
スタンレーとステラの家とその外の路地が俯瞰図で見える感じ。
どうやら端の席だと見えないシーンもあるようだったんですが、わたしの席からは全体がよく見渡せました。
ごちゃごちゃとした生活観がニューオリンズって感じ。(何が? 笑)
なんとなく『唐版 滝の白糸』のセットのイメージに近い。
ホール内、クリスマスに使いそうな電飾が3本ぐらいパーティー風にぶらさがっていて、ちかちかしている様子がなんとも安っぽい臭いがして場に合っている。
その後開演してからはライトの当たりで奥行きが見えてすごくおもしろかった。
が、ひとつ。
どーしても気になって、どーしても笑いがこらえられなかったのが1点。
スタンレーの家のお風呂場にあたる場所。
ここは曇りガラスのような壁で、出演者が風呂場に入るとその曇りガラス越の演技になるんです。
てーか、影絵でシャワーとか浴びられると、うわーって感じ。
結構この影絵シーンが多くて、この演出だけは何とかしておくれって客席でひくひく笑うわたし。


■夢見る孤独なヒロイン、ブランチ

さて本題、樋口可南子のブランチ。
いや、樋口可南子と限定せずにブランチ。
3時間! までの長丁場、ブランチといかに近づけるかが頼りになってしまう。

ブランチはいつもお酒を飲み、自分を美しいと言ってもらわないと気がすまない。
ひたすら自分の事情をしゃべりつづけ、極度なデリケートさで世界に対して怯え続ける。
妹、ステラの家に『欲望』とう名の電車で現れたブランチはステラの夫、粗野なスタンレーと反発し合う。
観客にはブランチの異様なイメージを抱かせ、少しずつ、本当に少しずつその孤独の理由を明かして行く。

──1時間半たった休憩時点ではまだまだ明かされないのだが。
ちなみにわたしはここいらで眠りに入りかけました。(そしていわしさんに眠いよメールを打つ不届きモノ)
これはもう、原作からしてこうなんだろうし今まで上演されてきたこの作品もこんな感じだったんでしょう。
が、ただひたすらブランチVSスタンレーの戦いを見ているとなんとなくぼーっとしてきてしまった。
うーむ、わたしにはこういうの向かないんだなあ、と独り言。

さて休憩時間をはさんだその後、ようやくブランチの孤独の理由が明かされる。
16歳の頃結婚した少年が実は同性愛者でそれを少年に告げたことで少年が自殺してしまったという過去。
それからその少年の穴を埋めるためにひたすら男性をもとめてきた過去。
そしてついに17歳の教え子(ブランチは教師)まで手を出し学校を首になった過去。
スタンレーの友人、ミッチェルに対しては潔癖な女性を演じているが実はその正反対。
だからこそ最後の望みとしてミッチェルに対して演じつづけるブランチ。
ラスト、その全てが白日の元にさらされ、周りの人間の拒絶と同情とで狂ってしまうブランチ──。

ああ難しいなと思ったのがまあ風土の違い。
16で結婚するのもようわからんし、彼が同性愛者と言われても日本では潜伏した事象だから身近に感じるショッキング度も低いんですよねえ。アメリカじゃないから。
でもそれって別に演じる側の問題ではないし、本の問題でもなくてわたしの問題。
どんなにすばらしいとされる作品でも、自分が入って行けるポイントがないとなんとなく傍観者なのが悲しい。

ただ、ブランチの誰かを求めて生きつづける気持ちもわからないではない。(男性陣にはさらに遠いか)
最後に救いを求めた(らしい。パンフにはそう書いてあるし)永島ミッチェルはいわゆる安全パイの男性で、可もなく不可もない駆け込み寺的存在。
わたしにはそんなにブランチがミッチェルにすがっているようには見えなかったんですが、最後ミッチェルに過去がバレて振られた時の動揺ぶりからすると『ミッチェルとの結婚』がブランチの最後の逃げ場だったんでしょうね。(パンフにも書いてあるし。しつこい?)
でもそれって、ブランチがミッチェルという人に駆け込んでるというより、ミッチェルっていう場所に逃げてるだけだとは思うんだけど。所詮、自分を賛美するが自分を脅かさない男性に一時退避というか。(笑)
そうやって見ちゃっているのでブランチの最後の荒れよう、狂気とのはざまに落ちて行く瞬間にミッチェルが同行してるのが妙なイメージなんですが。

ブランチに近づけない。あと一歩なんですが、辿りつけない──観客であるわたし。
別に共感するから芝居じゃないんですが、どうも遠い感じがするのは何故なんでしょう。
ただ、樋口可南子はよかったです。
確かにこの役は杉村春子であり栗原小巻なんだなって感じ。
かつて美しかった、そして今年齢と美醜を気にする女性って感じには見えないべっぴんぶりなのが惜しいんですが、ただ今そこにいて美しいからこそぎりぎり感があってよかった気もする。
本当におばさんって感じで演じられると同じ女性として切ないもんなあ。


■内野スタンレーと七瀬ステラ

ワイルドな魅力爆発? との前評判の内野氏。
たしかに、黄泉の帝王トート閣下じゃないわね、あれは。
ポーランド系の粗野な男性の役。(ポーランド系ってそういうイメージていえばそうなのかな? ぐらいの認識なのでまず舞台背景が理解できてないのよね、わたし)
その妻役の七瀬ステラ。
もう、のべつまくなしべたべたしてて大胆。
内野ファンが休憩時間に「えーん、生チューの音まで聞こえるよう」と叫んでいましたが(笑)。
堂々と七瀬さんの胸まさぐったりするんだからそりゃワイルドだわ。
最後の方でステラの子供が生まれるというあたりになるとすごくかわいい内野スタンレー。
だけどまあ、個人的に怒鳴りっぱなしの役なんでちょっと好きじゃない。
ワイルド→ノックアウトとは行かなくてよ。(笑)
ただ、確かに実力派ですね、彼は。
ブランチはスタンレーのことを『自分を脅かす存在』ととらえているけれど、観ている側からしたら仲の悪い同居人だけどだからって破滅に導く登場人物という印象はなかった。
たまたまそこに居合わせただけ。
確かにスタンレーがブランチの秘密を明かすが別に彼でなくてもよかった感じ。なんとも惜しい。

個人的には七瀬なつみがよかった。愛らしくて強気で。
でもまあ、ステラのブランチに対する想いがいまいちよくわかんなかったですけど。

永島ミッチェル、無骨な男性のイメージそのまま。
ただ、ブランチの過去を知ってからブランチを責め立てるシーンなど、早口になると「おいおい、何言ってるかききとれない~」というカツゼツの悪さ。ああもったいない。

拍手

作・演出/わかぎえふ

ReviewWriteDate:2000/10/21
LastUpdate:2000/10/21

Cast:
わかぎえふ(キキョウ)/及川直紀(安達勝道)/コング桑田(松平直政)/生田朗子(お夕の方)/藤田幸恵(藤原桂子)/朝深大介(紅情死郎)
ツバメ(久野麻子)/安井邦彦(河野竜之進)/風間水希(茜)/菅川裕子(サギリ)
野田晋市(菊之助)/千田訓子(あやめ太夫)/尾崎美樹(月姫)/磯川美樹(お洋)/西尾崇(古谷忠之)/恒松崇浩(高嶋義信)/可児仁志(可児丸/小田切)/坂口万紀(お亀)/大庭英紀(政々)/佐々木智史(雷鬼)/谷口友梨(華姫)/中山毅一(香代の方)/松下詞子(コヨリ)/水谷有希(ツバキ/新富屋)/安田武敬(幽鬼)/小林仁(赤鬼)/原田篤志(炎鬼)/升田祐次(烈鬼)
山本信記(トランペット)/江崎将史(トランペット 9/25,27のみ)

2000/10/12~22 @本多劇場

Date:
2000/10/15 15:00 H18

Note:
リリパット・アーミー6年ぶりの本格時代劇。

Story:
日本一の興行師、菊之助のもとに安達家から興行の依頼が入る。
その興行とは松平家をまねいた茶会。松平家はその茶会を失敗させ安達家に恥をかかせることで娘月姫と安達家の子息との結婚話をなかったことにしようとしているのだ。
安達家はなんとかこの茶会と併せて行われる婦人同士の衣装比べを「勝っても負けてもいけない勝負」として菊之助に依頼をしたのだった──。




ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
浪花のサービス精神満開の大団円
--------------------------------------------------------------------------------

時代モノに弱いのは以前述べた通り。
以前から一度リリパット・アーミーを観てみたいと思っていたので時代劇ということで初チャレンジ。
さて──。


■歌と踊りの大サービス

お話はもう大団円。
歌舞伎を意識したというわかぎえふ氏。
それがなんとなく納得。歌舞伎くわしくないけどこういう感じありそうとうストーリー。
あげく『双子が生まれ一人を殺した』と言われれば、そら主人公菊之助が実はその殺したはずの子供にきまってるじゃん! 的な思い通りの展開がここちよい。
この菊之助役の野田さん、カッコいい~!
へなへなしつつも芯がありそうで、でも甘ったれって感じがよい。
他の芝居でも観てみたい。
(シアターガイドの『わたしの今月』コーナー出てるんですね。写真違うじゃないっすかあ。本物のがいい!)

ただちょっと気になったというか不満なラスト。
菊之助は実は摂関家のおぼっちゃんが家出して自分のやりたいこと=興行師をやっているっていう設定なのに
養母である桂子に華姫との縁談を薦められても「実はロリコン気味だから丁度いい」とかいって結婚しちゃう。
まあ、甘ったれのボンボンが家出してっている話なんだからそれでもいいんだろうけど
腐っても女性ファンはそうは納得せんぞー。
そこでまた家出ぐらいしてほしいもの。カッコいいキャラにそう簡単にロリコンって言われても納得できないわ、感情的に。


■東京のオーディエンスは???

前日、やはり歌と踊りの『WHITE』だったわたし、なにやら歌と踊りに縁のある週末。
踊りはまあ決してうまいわけじゃないんですが、パワーがある。
ただ、観客のノリが悪いのかな、と思った。
(もちろんわたしのノリは悪い)
このリリパット・アーミー、大阪が拠点らしい。
「てことはこのシーンなんかも静かに見たりしないで、ちゃんとノッてあげて手拍子とかじゃないの?」という場面でも東京のオーディエンスは静かに観てるんですね。
だからエネルギーいっぱいに歌い踊っている舞台がどうも違和感、というか壁ができちゃうというか、そういう感じでした。
絶対東京と大阪のお客サンって違うと思うんですよね。


■謎のちくわ

カーテンコール時、「本公演ではおなじみのー!」と言いながら突然ちくわが配られ始める。
リリパット・アーミー初見の上、予備知識のないわたしはびっくり。
でもみんな普通に騒いでるところみると、おなじみなんだろうなあ。
おなじみってことはみんなリピーターだったりファンクラブに入ってたりするの?
わりに観劇中のノリがいまいちだった気がするんだけど・・・

終演後、わかぎえふ氏とコング桑田氏登場。
平日のチケット売れてないから今日の半券で1000円引きます! とのこと。
そんなチケット売れてないの?
結構おもしろいのに。
かくゆうわたしは平日下北沢に行く元気がないから日曜観劇。


■突然のサイン会

なぜかサイン会。終演後のロビーです。
サインするのは野田さんと千田さん。
パンフにサインしてくれるらしい。このパンフ、すごく小さくて便利。中身もおしゃれ。キャストの写真がよいのです。
野田さん素敵モードのわたしはサインもらおうかちょっとだけ悩みはしたものの、早く家に帰りたかったので遠慮してしまいました。
今思うともったいないかな?
最初から最後までサービス精神満ち溢れるリリパット・アーミーでした。

拍手

脚本・監修/倉田淳
演出/倉本徹
振付/TAKASHI

ReviewWriteDate:2000/10/21
LastUpdate:2000/10/21

Cast:
1組
船戸慎士(正治)/斎藤直樹(岩波/客演)/岩崎大(三角草太郎)
2組
佐野孝治(正治)/秋田恭(岩波)/小林浩司(三角草太郎)
共通
青山治(坊)/舟見和利(マドンナ)/前田倫良(教頭=ティンク)/河合貴哉(向井=ウィンディ)/池内代輔(用務員=ハクション)/鶴田浩一(桜子=バオバブ)/森川洋(校長/プレイボーイ/長老)
※ダブルキャストの本役でない日も全員出演

2000/10/7~15 @恵比寿エコー劇場

Date:
2000/10/14 14:00 D9
2000/10/14 19:00 Z12

Note:
スタジオライフ新人公演。毎回新人公演はこの『WHITE』という演目が行われているそう。
今回は客演として宮本亜門『BOYSTIME』(2001年1月再演決定)などに出演している斎藤直樹が参加。

Story:
いつもと同じ朝
いつもと同じ元気な少年
いつもと同じ臆病な少年
ただいつもと違う事は
ホコリだらけの真っ白な本を見つけてしまった事。
そして大魔王、妖精、破壊の魔王が!

少年達はいつもと同じ教室に入る代わりに
いつもと違う空間に迷い込んだ…。
(パンフレットより)




ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
三角くんとWHITEの関係の遠さ
--------------------------------------------------------------------------------

さて新人公演。
前のWHITEの時はまだスタジオライフは知らなかったので今回初見。
演出が違うということで以前とはまるで違う舞台になっているらしい。
てなわけでWキャストの1組、2組を1日で一気に見ました。


■どこかで読んだストーリーとどこかにいるはずの三角くん

主役は、三角くんらしいです。
三角くんは臆病な少年。元気な正治たち3人組とマドンナたちと不思議の世界(本の世界)に迷い込む。
そんな三角くんが本の世界の冒険を通して自分の殻をやぶり一歩を踏み出す──といったストーリー。
なんですが。
ストーリーはほんと、もう何回読んだかわからないような感があります。
だからこそ、ストーリー以外の部分、ちゃんとしたキャラクター描写で観客に物語る必要があると思うのです。
にも関わらず、三角くんが、終始そこにいなかった。

ストーリーは常に正治たち3人組を中心に進みます。
前半はただひたすら学校の図書館のシーン。
そこでどうやら毎日アドリブの芝居を含めてひたすらギャグ?というかかけあい。
その過程で魔王や妖精などが登場し、キャラクターに加わってゆきます。
マチネ観劇時は、とにかくこのシーンを長く感じました。
わたしは芝居やテレビを見て簡単に笑ったりはしないので(ヤナやつやなあ)、なかなか世界に入り込めなかった。変な内輪盛り上がりに映ってしまったので。
ソワレの観劇は前から2列目だったせいか笑いがストレートに入ってきましたが。
(うーん、秋田さんのおかげかも)

ストーリーは途中から本の世界に移ります。
ただ、話をひっぱりかきまわし動かしてゆくのは3人組と魔王や妖精たち。
三角くんはただひたすら傍観者として舞台の端でおびえています。
観客の視線は決して三角くんには向かわないでしょう。
(三角くんの役者が好きなら別ですが)
それなのにラスト、池内ハクションが「この世界は君、三角くんなんだ」と言って急に三角くんを当事者にひっぱり出す。
もちろん、どっかで聞いたことのあるようなストーリーですので、わたしはそういうオチであることはなんとなくわかっているわけです。
でもそれはわたし側に頼っているわけですが。
場面は『銀河鉄道の夜』の世界に移ります。
そこでジョバンニである三角くんは舟(自分を守るもの)から飛び降りて切符をとらないと死ぬ──ということになります。
今まで一緒に異世界を旅してきたメンバーがみな三角くんを責めます。
苦悩する三角くん──ついに自分の意思で舟を降り、バオバブ(敵役)から自分の人生を取り戻す。

正直なわたしの感想。
「どうしてこんなことで自分が変わるの?」
三角くんが自分で経験し感じ拒絶し受け入れるものが、そこには何もないのだ。
少なくともわたしには見えなかった。
最後のシーンで言葉だけで説明されても、理解できない。
(いや、わたしは未だに三角くんとしての自分を意識して生きているから、理解できないわけではない、彼の気持ちが。)
彼はひたすら傍観者でしかない。
台詞でも「君はいつも傍観者だった」と言っているが、ではどうして傍観者である彼がこれしきのことで一歩が踏み出せるのだろう?
彼にちからを与えたのは『銀河鉄道の夜』シーンでの禅問答だけなのだろうか?
本当はそんなことはないはずなのだ。彼は何かを感じたから一歩を踏み出すはず。どうしてそれを描いてあげられないのだろう?
だからこそ思うのが「何かを見ているだけ、極限で選ばされるだけで、人は変わったりできない」ということ。
いやね、もしそんなことで自分が変えられるならいいのに、とは思うんですが。
何となく高校時代はそんなこともありました的なところに留まってしまいそうな世界。
言葉でいくら説教されても、わたしは得心できないわよ──てある意味憤慨してしまいました。

三角くんの気持ちはわかる。
だからこそ、ちゃんと三角くんにそのきっかけをあげてほしい。


■フレッシュたちのはじけっぷり

などなどと辛口に書きはしましたが、場を楽しむという意味では楽しめた。
2回目だった2組の方がすんなり笑いに入れたから楽しかったかな。
なにより『ドラキュラ』でデビューしたフレッシュくんが元気いっぱいにはじけていたこと。
純粋に彼らのそういう姿を楽しめたという感じ。

船戸さんはまさに『正ちゃん』! という感じ。
今回イチオシとなった青山さんの坊はもう最高。ボケボケなところもいいし、彼はちゃんとした演技もできそうなんで今後の期待が大。たまに舌がこんがらがってましたが。(笑)
池内さんは『黒いチューリップ』であの笠原さんのWキャストを演じた時から際立っておりましたが、今回のコミカルな役も素敵。用務員服なのに足ながーい。今回チケットは池内担当にしてしまったわたし。トーマでどういう役をするのか楽しみな一人。
秋田さんは今回初おめみえ。なんとも芝居がうまい! 場をつくるのがうまい。台詞じゃなくて演技で笑わせるってすごい存在感だよ。ライフっぽくないけどもっと観たかった。どうして今まで登場しなかったの?
前田さんは確かに痩せた? 台詞がはっきり聞き取れるお方。オヤジなティンクがかわいい。あの役を以前は舟見くんがしたんだから不思議だわ。
河合さん、彼に関しては『黒いチューリップ』のアンケートで「カツゼツ悪くて聞き取れない。精進して欲しい」と書いてしまった過去があるんですが、今回も目立っていました。黒チューと違って台詞が多いのでかなり気になった。聞き取りにくいを通り越して聞き取れないんだもの。次こそは改善してほしいわ。


■ジュニ3たち

ジュニ3たちの成長も著しかったと思うWHITE2000。
個人的に舟見! くんの成長に感動しました。がんばったね。がんばってるんだねって感じ。
昨年のカウントダウンの時「マドンナ(女役)は嫌い」って言っていた彼ですが、ちゃんと役者として女役を演じられていた気がする。
以前は台詞がない時は突っ立っているだけだった彼ですが今回はちゃんと台詞がなくてもマドンナを演じていた。もう、おねーさんは感動しました。
ついアンケートに「舟見くん成長したね」とかかなり偉そうなことを書いてしまいましたわ。
同じくカウントダウンの時「今年は女役をやりたい」と冗談で言っていた鶴田さんの女役、結構良かった。イメージが曽世さんの演じる女役でした。
あと佐野さん、喉弱いのかなあ。『黒いチューリップ』の時も楽日が近づくと声がかれていたけれど、今回もそうでした。うー、がんばれ。『訪問者』はメインだぞ! 1ヶ月の長丁場がちょっと心配。でもガクラン姿、カッコよかったわ。


■そして・・・斎藤直樹さん

客演である斎藤さん、実は斎藤さんばっか観てましたよ、ダンスの時は。
フレッシュやジュニ3たちとはレベルは段違いでした。
演技もよかった、岩波くんかわいい!
後日所属事務所CUBEのホームページで知った、斎藤さんの年齢。
わたし勝手に年下だと思ってたんだけど、全然年上じゃないか!
キャリアもすごいんですね。

マチネはクラブライフデイというファンクラブ限定の回で、終演後出演者による芸みたいのが見せてもらえるんですが、斎藤さんのが楽しかった。
彼が以前安室奈美恵のドームツアーでダンサーをしていた時のダンス、『Walkin the Park』(あれ、タイトルあってるかな?)のサビの振付指導。
指導を受けたのが笠原(斎藤さんとは『滅びかけた人類、その愛の本質とは…』の出演で宮本亜門つながり)、曽世(麺達のCMまだ見れていない~)、前田(フレッシュ。急に引っ張り出された)の3名。
大学の頃面白がってこの振りを真似てみたもののちっともわからなかった振り。
ほうほう、こうしたたのか・・・と感心。
さてミュージックスタート。
曽世さんはさすがカンがいい、すぐ斎藤さんの振りを写してしまっている。
前田さんはどうやらダンスが苦手らしく、妙な盆踊りのよう。
笠原さん、スターってああいうのを言うのね。『スタア』て感じ。
もう、振りなんてもう勝手に無視して好き勝手踊っている。なのに目立つ。カッコイイ。場を自分のものにしてる。うーむ、さすが。
でもやっぱり斎藤さんの踊りがすごい。
踊れるっていうのはこういうのを言うんでしょう。
ダンスシーンの多かった『WHITE』、斎藤さんなくしてはつまらないダンスシーンでしたよ、きっと。
ちなみに斎藤さんのオフィシャル?ホームページは→■CHE4 WEB■


■スタジオライフ、死ぬ気の大サービス

今回はチケットもぎり、会場案内などスタジオライフのスター役者たちばかりずらっ。
『陰陽師』以来の浦さんをあえてえらんでチケットもぎりをしてもらうわたし。
(そして浦さん休団の挨拶もこの日あったんですが)
物販の及川さんは妙な格好しているし久しぶりの石飛さんもいる。
会場案内の笠原さんってのも凶悪ですな。
クラブライフデイの企画ではミルキーウェイ(楢原・深山)のコントもあるし。
さすが連鎖公演前、なんとかしてチケットはけさせるための劇団の努力!
堪能いたしました。最近こういうの減っていたので。

拍手

ReviewWriteDate:2000/10/21
LastUpdate:2000/10/21

Cast:
一、元禄忠臣蔵-御浜御殿綱豊卿-
  仁左衛門(徳川綱豊卿)/段四郎(富森助右衛門)/孝太郎(中臈 お喜世)/我當(新井勘解由)/宗十郎(御祐筆江島)
二、英執着獅子
  福助(姫後に獅子の精)
三、与話情浮名横櫛
  仁左衛門(与三郎)/玉三郎(お當)/弥十郎(蝙蝠安)/東蔵(鳶頭金五郎)/羽左衛門(和泉屋多左衛門)
四、お祭り
  仁左衛門(鳶頭)/玉三郎(芸者)

2000/10/1~25 @歌舞伎座

Date:2000/10/7 11:00 1F花道横

Story:
一、元禄忠臣蔵-御浜御殿綱豊卿-
 真山青果の名作。将軍綱吉の甥・綱豊(後の六代家宣)のもとには浅野家再興の嘆願が出されていたが、仇討ちを願う綱豊は迷っている。折しも綱豊の御殿で行われる能の催しに吉良上野介が来ることを知り、浅野の浪人・富森助右衛門がやって来て……。綱豊と助右衛門の、丁々発止のやりとりが見どころだ。
二、英執着獅子
 獅子を扱う石橋物の代表作で、名作『鏡獅子』の原型ともいわれる、変化に富んだ長唄舞踊。艶やかな姫に、やがて獅子の精が乗り移って踊り狂う。
三、与話情浮名横櫛
 土地の親分の妾・お富と逢いびきしたため、めった切りにされた若旦那の与三郎。三年後、やくざ者となった与三郎は、仲間の蝙蝠安とゆすりに行った家で、お富とめぐり会う。
四、お祭り
 江戸の夏祭りで鳶の頭がいなせな男ぶりを見せる清元舞踊。
(シアターガイドより)




ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
歌舞伎とわたしの相性は?
--------------------------------------------------------------------------------

玉三郎を観よう、と歌舞伎好きの友達に誘われ、人生で3度目の歌舞伎観劇。
1月に観た時はまんまと山場で眠りこけてしまったわたし。
さて今回は・・・?


■元禄忠臣蔵-御浜御殿綱豊卿-

ネタは忠臣蔵。
田舎が赤穂に近いため親が赤穂浪士大好きという環境で育ったため少しは身近。
セットがぐるりと回るのが「おお歌舞伎」って感じ。
昔学校で行った歌舞伎教室のときに教わったのに、名前が出てこない・・・
仁左衛門って誰かと思ったら片岡孝夫でした。
襲名とかされると名前がさっぱりわかりません。
この仁左衛門の能姿での立ち回り、消え方、カッコよかったです。
でも個人的に一番好きだったのが宗十郎演じる江島。
この後30分の休憩、お昼ご飯。
お弁当を歌舞伎座に入る前に購入していたので花道の隣でもぐもぐ。
このあたりまで、わりと元気なわたし。


■英執着獅子

個人的に、今回一番楽しかった演目。
福助演じる姫が獅子の精に取り付かれる・・・というもの。
姫姿での踊りがなんとも愛らしいし細かいのだよね、動きが。
歌舞伎はよくわからないわたしみたいな人間でも十分楽しめました。


■与話情浮名横櫛

歌舞伎の謎っていうのがこれ。
出逢いのシーン、三年後の間にちゃんと場面があるらしいにもかかわらず、いっきに省かれてしまった。
ので、歌舞伎初心者のわたしは途惑うばかり・・・
と言いながら、つ、ついに睡魔が・・・!
ここで一つ言い訳をさせてもらうと、前日夜飲んでました。
歌舞伎座と同じ銀座の駅から終電で帰宅したのです。
で、翌朝10時15分に銀座駅にいたのです。
ああ泊まった方がいいって感じ。(どこに?)
玉三郎、美や・・・でも、ね、眠い・・・
ごめんなさい、出演者のみなさま。こんないいお席で舟漕いでるよ、わたし。


■お祭り

ラスト、お祭り。少し目覚めるわたし。
はたして歌舞伎、相性がいいのか悪いのか・・・?

拍手

作/長野まゆみ
出版社/河出文庫

ReviewWriteDate:2000/10/1
LastUpdate:2000/10/1

Story:
<「兄さん、あの署名、……あれはどう云う意味。自分の名前を記せばいヽのに。」>緑に深く埋もれた祖父の家で、ひとり療養する兄の夏織。気怠い夏の空気の中、弟の柊一は夏織の秘密の"隠れ処"を見つけ出そうと川を遡っていった……。(裏表紙より)


ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
ひと夏・兄弟・秘密──という黄金パターン
--------------------------------------------------------------------------------

■長野まゆみの季節は夏

長野まゆみに季節をあてはめると、ファンはみな夏をあげると思う。
それは海水浴場だったりラジオ体操のような夏ではなくて、死の匂い、腐敗の臭いのするそういう夏。
この『カムパネルラ』も一連の長野作品に類似作品の多いパターン。
夏・兄弟・秘密・死の予感。

実は先に読んだ『賢治先生』に感動していた矢先だったので、てっきり関連書かと思っていた。
ふたをあけたら『カムパネルラ』というのは言葉として使われているだけで、続編じゃありませんでした。(笑)


■大人の不在

この本を読みながらまたしみじみ思ったのが長野作品での『大人の不在』。
たまに大人も出てきますが、いわゆる大人なのかしら、あれは(『サマーキャンプ』や『新世界』を思いうかべながら・・・)。
この作品でも祖父は存在しているものの、ヒトコトも発言はしない。
作中、常に眠っている。
これは意味ありげでよいわ。(笑)
にもかかわらず少年たちはちゃんと昼にはご飯を食べている。
お手伝いさんの描写はないんだけど、ご飯はちゃんと出てくるわけだ。
そしてそれで十分世界が回っている。
この何とも云えぬ大人の不在。
他の作品以上に気になってしまいました。
だいたい、どうして子供がひとりで森の中を歩きながら祖父の家に行くんだろう。
もちろんそれが世界観なので問題ないのですが、この徹底的な大人を排除した世界、興味があります。

拍手

作/長野まゆみ
出版社/河出書房新社

ReviewWriteDate:2000/10/1
LastUpdate:2000/10/1

Note:
長野流、銀河鉄道の夜。

Story:
賢治はいつの間にか列車に乗っている。どこから来て、どこへ行くのかもわからない。
そんな賢治の元に、ふたりの少年──カムパネッラとジョヴァンナ──が現れる。


ヒトコトReview:

--------------------------------------------------------------------------------
せつないまでの夜の闇──じっくり味わいたい銀河鉄道の夜
--------------------------------------------------------------------------------

■賢治先生

賢治先生というのはもちろん宮沢賢治を暗に模している。
このお話自体がもうひとつの銀河鉄道の夜。
長野まゆみが宮沢賢治好きなのはファンの間では有名なところ。
そう言われて見ればもつ雰囲気も似た部分がある。

この賢治先生は何故か列車に乗っている。
その列車は浅草についたりもするしもっと南をめざしもする。


■カムパネッラとジョヴァンナ

そんな彼のもとにふいに現れる少年たち。
いかに美しい少年かというのは丹念に描写されているのだけれども、
正直わたしはそういう美醜云々を描写されるのがどうも気恥ずかしい性質。
(多くの長野ファンはこういう部分が好きなんですがね)
長野作品は大体2通りあって、宮沢賢治ばりの童話といいますかそういったものをモチーフとした旧かなづかい満載のもの(『野ばら』など)と、文章は限りなく平易で淡々としてもの(『白昼堂々』シリーズなど)があって、わたしは後者で長野作品にはまったクチ。
さては、これは超ロマンチックな美麗な文句でちりばめられたタイプの本かな──?
そう思いながら読み進む。

カムパネッラはもちろんもう1人のカムパネラ。
みな『カムパネッラ』とは発音できず『カムパネルラ』と発音してしまう。
彼は言う。


「ぼくの名前は正確に願います。どうぞ遠慮なく、こいつはなんて厄介で世話のやける子供だらう、まったく癪にさわるって思ひながら、舌打ちをなさってみてください。さうすれば、自然とカムパネッラになるんですから」


舌打ちしながら呼んで初めて正しい発音。
どうでもいい描写かもしれないですが、わたしはこれがどうもせつない。
子供の台詞ではないというか、それでも実は子供というものはそういう世界の掟のようなものをもうちゃんと知っているのだ──というか。
賢治も怒りにまかせてカムパネッラと発音できたりもします。
ただそれは、なんとも悲しい響きなわけで、なのにそれを自分の名前として主張するカムパネッラの存在と、自分だけはちゃんと発音できるというのを自負している、もしくは支えとしているジョヴァンナ。

ジョヴァンナは少年にも関わらず女言葉を話す。
ただひたすら少年を描く長野作品にしては異質の存在。
女の子を描く時の長野まゆみの視点はどんな年齢の女の子であっても『女』として描くので。
そのジョヴァンナはカムパネッラにとって自分が一番でないことを病んでいる。
だからこそ強行なまでに自分の存在をアピールする。
その強さはとたん崩れる脆さでもある。
ふたりの少年のやりとりはそんな危うさとともに進んで行く。

ジョヴァンナはカムパネッラの友情をただひたすらに求めている。
自分が一番でないことを知りながら。
そんなことはない、というカムパネッラは悲壮感がない。
本質的にジョヴァンナの不安を理解していないからだ。
ふたりのやり取りは少年同士の友情でありながらまるで恋のさやあてのようにくりひろげられる。
そしてジョヴァンナが少年でありながら少女でもあるような微妙さ。
小学校時代の友達の存在というのは、もしかしたらそういうものだったかも知れない。


■銀河鉄道の夜との融合

第四章になってふいに鉄道に乗る前に話がもどる。
そう、銀河鉄道の夜のはじまり──。
かつて読んだ銀河鉄道の夜の話がすーっと思い出されてくる。
名前は違えど、そこで繰り広げられるのはまったくの銀河鉄道の夜の序章。
虫眼鏡で活字をさがすアルバイトをしてお金をかせぐジョヴァンナ(ジョヴァンニ)と彼のあこがれの友人カムパネッラ(カムパネルラ)。
そのせつない導入部からふいに鉄道内へと話が戻る。
そしてカムパネッラはジョヴァンナを置いて行ってしまうのだ。
これが本当の銀河鉄道の夜の通りに進むのならば、カムパネッラは死んでしまったのだ。

この第四章、実はこの部分が先出しで『文藝』の宮沢賢治特集に掲載されたもの。
その後第一章~三章が書き下ろされてこの本になったらしい。
長野まゆみの中ではすでに全体はできあがっていたのかもしれないが、なんとも驚異的なこと。
この物語は一章から三章までのやりとりがあってはじめて第四章の銀河鉄道の夜をより長野まゆみのものとしているのだから。


■文章の中に落ちている言葉ひろい

先にも書いたように、実はもともといわゆる美文が苦手である。
こまやかな描写を愉しむタイプではないのだ。
にもかかわらず、最近は長野まゆみのそういう部分が好きになってきた。

多くのファンはきっと次々現れる夢のような世界、少年たち、星、食べ物、そういった長野世界をつくりあげている要素自体も大好きなのだろう。
わたしはどちらかというと、そういう『普通でない世界観』の中に垣間見られる『ごく普通の感情』表現をみつけるために読んでいるような感じだ。
特にこの本は、ちょっとでも気を抜くと気づかずに過ぎてしまいそうなそういった『感情』がはしばしにうめつくされている、そういう本だった。
何度でも読み返したくなる、そういうモノがあったのはなんともうれしい限りだ。

拍手



カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
フリーエリア


CheckItOut,please
by arrows

マクロミルへ登録 gooリサーチモニターに登録!

最新CM
[03/19 秘書アズアズ]
[01/06 通りすがり]
[01/05 Hiroic]
[01/05 通りすがり]
[11/26 Hiroic]
最新TB
バーコード
ブログ内検索
アーカイブ
忍者アナライズ
プロフィール
HN:
ひろいっく
性別:
非公開
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]